■『パンドラ』20周年お祝い同人誌■
『レプレティメント・パナギア』
(文庫本サイズ/ページ数未定/発効日未定)
※当エア同人誌は、『パンドラ』20周年をお祝いするために、4月1日に『泡最新刊は天色ユージンファン待望のパンドラ続編やったで! ユージンちゃん再登場してた! そのうえ主役やった! ポップライフコンビがジャンプ漫画かいうくらい熱く友情努力勝利してて違和感しかない!ffサンのとトモダチになっちゃったユージンちゃんとか妄想上の生き物やと思ってたで(困惑)! 天色と舞阪は! これからも!! ズッ友だょォオオオオオ!!!!!!』という嘘をつく企画です。
兄弟モノとかMPLS化とか同キャラとか好みの属性を整合性かまわずすべててんじっくんにぶちこんでみたいです。
あとコスプレとかにみょうにくわしい腐ギーさんにどっちが受か熱心に訊かれてぶちぎれたら純愛か…尊い…ホモォ…って呟かれてますますヒートアップする舞阪さんかわいいと思うんですが…。
てんじっくんは天使だからついてないと妄想してるけど、戦車彼女読んでたらくっつけたり取り外したりできるレゴみたいな身体してるらしいからすごいな
■ 表紙サンプル ■
『レプレティメント・パナギア 表紙イメージ』

■ 本文サンプル ■
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舞阪は興味深そうに祈を見つめた。
「きみはとても綺麗な顔をしている。失礼だが名前を聞いてもいいかな」
「なによ、ナンパ?」
祈は怪訝そうな顔をした。
「まあいいわ。あんたお金持ってそうだし、顔がいいし。祈よ。残念だけどあたし今はお客とってないの。あたしを買った男がそういうの嫌がるのよ。ほかのお客の相手をされるのが」
「ふーん。そんなに金を持ってるようには見えないがな」
舞阪が香純をじろじろ見て言った。無理もない。金を持っているようには見えない。
「家出するときに当面の金は用意してきた。女ひとり買うくらいなんでもないのさ」
香純は適当なことを言ってごまかした。舞阪は香純のことはどうでもいいらしく、祈のほうに興味があるようだ。
「祈さんは俺の友だちによく似ている。それで彼の身内かと思って声をかけてしまったんだ。きみは天色とかいう名前を聞いたことがないか」
「え、天使? ああ、テンジキ。それなら、あたしは知らないけど」
祈が香純のほうを見た。おまえの友だちとは違うのか、という仕草だ。彼女は香純のときと同じで、舞阪をすぐに信用してしまったようだ。悪の組織の構成員にしては警戒心がなさすぎた。
天色優の名前を出すのはまずい、と香純は直感した。舞阪とかいうこの男がもし天色と同じ組織の人間だったら、今は裏切り者の優をつけ狙う追手ということになる。ごまかしたほうがいい。
「いいや、知らない」
「ならいいんだ」
「天色くんの写真は持ってる?」
祈が人懐っこく尋ねた。舞阪は哀しそうに首を振る。
「いや。どっちも写真を撮られるのが嫌いだったんだよ。俺と彼とはずっとふたりきりで生きてきた幼なじみで、この世でたったひとりの友だちなんだ。俺はちょっとばかり特殊な環境にいたんで、天色くんのほかには心を許せるものも信じられるものもない。だから彼の行方がわからなくなってからは、ずっと心配でたまらないんだ。このあたりで天色くんを見かけた人がいると聞いたら、彼に会いたくていてもたってもいられなくなったんだ」
「そう。かわいそう。きっとすぐに見つかるわよ」
「そうであることを祈るよ」
舞阪は微笑した。不思議なことに、彼もまた優にすこし似ている気がした。
この男を信用してもいいのか。天色の友だちなら教えてやったほうがいい。嘘は言っていないようだ。それでもなぜか口に出してはいけないような、そんな直感がある。
(……「ユージンを探して」P68より)
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「大丈夫なのか、優」
「いや。気持ち悪いし、ふつうに嫌だよ」
天色は表情も変えずにばっさりと切り捨てる。海影が見慣れていた気の弱そうな天色優の顔からはかけ離れた反応だったが、もう気にならなかった。
「あいつはいったいなんなんだ?」
「きみと同じ人間だ。でもずっとひとりぼっちだったせいで、頭がいかれちゃってる。寂しがり屋なんだろうね。昔の自分を見てるみたいで可哀想だけど、関わっていると命がいくつあっても足りない」
「たしかにヤバそうな奴だったし、できればもう会いたくないな。そうだ優、いや、ユージンか……」
こいつが――天色が〈ユージン〉だったのだ。同じ顔をした同類たちに、最後の希望と呼ばれていた合成人間。
「優でいいよ。いちおう『それ』がぼくの名前ということになってるけど、あまり好きじゃない。きみたちにそう呼ばれるのはいやなんだ」
「組織を裏切ったって聞いたが、大丈夫なのか。俺もさ、その、おまえを守れたらいいんだが、なんか……悪いな」
優は、今更なにを言っているんだ、というふうに微笑んだ。それは正体を隠して仲間たちと過ごしていたときよりも、天使のように純粋で眩しかった。
「いつ死んでもいいってずっと思ってた。今も思ってる。でも前とは意味が違うんだ。あんまり嬉しくても、もう死んでもいいって思うんだね」
(……「ユージンを探して」P92より)
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トオルは――舞阪徹はフォルテッシモと同じ顔で、偽装しているときのユージンにそっくりの柔らかい口調で言った。
「幼いころに君はちょっとした思いつきをしたよね。自分自身をまっぷたつに裂いてみたらどうなるだろう? 好奇心にかられて試してみたときは、うまくいかずに大変な目にあった。今では笑い話だけど。
でも君が死にかけている間に、強すぎる君の扱いに難儀していた人たちが、割れた半分を大事に取っておいたことには気がつかなかったでしょう。彼らは君の力を削ぎ、君が造反したときに君を殺す存在を作ろうと考えた。
自分でもわかってたんじゃないかな、フォルテッシモ。君と対等たりうる者はなく、君を殺せるのは君しかいない。誰かに造られたものってくくりでは、僕はとても人間に近い合成人間ということになるのかな。よくわからないけど。僕は君自身だ」
徹の声はとても優しい。晴れた春の日の天の色のように穏やかだ。
「僕は寂しかった。君が見ないふりをした感情をすべて持ってましたからね」
(……「割られた男」P162より)
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「おまえが大切なものを持つようになったのは、これは嬉しい誤算だった。それを奪うことで『完成』させることができるんじゃないかと考えたんだ。こちとら生まれたばかりで俺に傷を負わせた愛しい宿敵の成長が、楽しみでしょうがなかったんでな」
フォルツァートはニヤニヤ笑っている。いつも優しかった目が、別人のような――『半身』のような、磨かれた刃物の切っ先のぎらりとした光を放つ。
「おまえの怒りはもっともだとも、ユージン。フォルテッシモはおまえにとって、たったひとりの〈遊び友達〉だった。
力を持っていれば使いたがるのが生物だ。誰が上か下かなんて意味がないとほざいていたおまえも、楽しいという気持ちを知った時から、ずっとうずいているだろう。おまえは戦うことが得意だ。相手を騙して殺すことが楽しい。〈最強〉相手にはさすがに勝てないと見計ったが、無理を道理に変えるのがおまえの見切りの力だ。フォルテッシモに勝ちたい。フォルテッシモを壊したい。何度も何度も試せばいつかは答えにたどりつくだろうが、試せるのは一度だけだ。目標は困難であればあるほどたまらない。
おまえの殺しは遊びなんだ。そんな馬鹿につき合ってくれるフォルテッシモは、おまえがひた隠しにしてきた本心に共感してくれる最高の理解者だった――だが死んだ。またひとりぼっちだ。誰も認めない。誰が強いか弱いかすらわからない馬鹿どもが友達だなんだとうるさく騒いでも、おまえの心にはなんにも届かなかっただろ?」
「香純くんのことを言ってるのか」
ユージンは呆然と呟いた。
(……「雨と讃美歌」P162より)
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気がつくと天色は、三都雄といっしょにベンチにすわっている。季節は冬だ。弱い光が枯れた街に差しこんでいる。そこは、最後にふたりで散歩をした公園だった。
三都雄とはよく話をした。七音は海影とふたりきりになりたがっていたし、辻と神元はもともと同じグループだったから、必然的に二人組になってしまったのだ。三都雄はよく自分たちのことを「あまりものコンビ」と呼んで笑った。
「また頑張ってるな、天色」
「三都雄くんはすごいよ。ぼくにはできないことばかりやる」
天色はうなだれて溜息をついた。三都雄は大きな体を折り曲げて天色の顔を覗きこんできた。
「おれこそ、天色のことはちゃんと守ってやりたいと思ってたし、いやそれはあいつらみんなが思ってたか。うん、でもうまくなくてさ。逆におまえに守られてばかりだった。おまえがそんな深刻なことを言い出せなくて悩んでることにも、気づいてやれなくてごめんな。はー、おれ、ぜんぜんわかんなくてさ」
監視対象にそんなことを言われて、天色は苦笑した。
「気づいてもらったら、それはそれで困るよ」
「いや、おまえは嘘がへたくそだって。ばれたらどうしようって悩んでさ、いつも泣きそうな顔して、まわりに大丈夫かって聞かれてちゃ世話ないぜ。ま、おれはおまえのそんなとこ好きだけどさ。いやー、しかしびっくりしたよな。あの天色が、まさか漫画に出てくるみたいな怪人だったなんて。めちゃくちゃかっこいいし、もしもっと早くに知ってたら、おれ握手してほしかったなあ」
「あはは、三都雄くんらしいな――ぼくもきみらのところへすぐに行くだろう。でも困ったことに、また友達を守れないかもしれない。あわせる顔がないよ」
「大丈夫だよ、天色は」
三都雄は自信満々に胸を叩いて、天色に向かって頷いてみせた。
「芯がしっかりしてるし、ひとつ決めたら譲らないだろ。うまくいくって。おれも手伝ってやるからさ。なんでもひとりでやろうとすんなよ」
三都雄はいつもの根拠のない自信に満ちた能天気な顔で、「ひとりぼっちのおまえなんかもういないんだ」と天色に言った。大柄な体に似あわない軽やかさで、飛びあがるようにして立ちあがり、ごつい手で天色の髪をぐしゃぐしゃにかきまぜた。
「『それ』、おまえにやるよ。おれは馬鹿だから全然うまく使えなかったけど、天色は頭がいいからなんとかするだろう」
温かくて柔らかい冠のようなものを頭に被せられた感覚があって、天色は顔をあげた。白い光が眩しさを増していって、三都雄の顔がよく見えない。
(……「血」P213より)
※うそばっかり書いています。※